「放浪息子」をマイノリティだったあなたへ捧げる
2011.04.29 TV
男の子がスカートを履いちゃいけませんか。
中学生の頃、あなたは。
異性に変身したい、と思ったことはありませんか。
なぜ異性の服を着てはいけないのだろう、と思ったことはありませんか。
もしかしたら同性のことが好きなのかもしれない、と思ったことはありませんか。
思春期、揺れる時期。
冬期アニメで一番惚れ込んだアニメは「放浪息子」です。実は他のアニメはほとんど見てなかったんですが、このアニメは本当に見てよかったと思えるアニメでした。今年は始まったばかりですが、僕の中では今年一番、近年の連続テレビアニメの中ではダントツです。
放浪息子は "女の子になりたい男の子" と "男の子になりたい女の子"、中学生の2人とその周辺の物語を描いたアニメです。主人公の男の子、修一くんは女装をするのが好きな男の子。でも女の子に恋の告白する男の子なんです。こういう書き方をすると「性同一性障害」や「ジェンダー論」の説教臭い話が始まるんだな、と思ってしまうかもしれませんが、先に否定しておきます。この話の軸はそこじゃない。
「マイノリティ」のお話です。
僕は女装をしたりということはありませんでしたが、クラスの中では少数派、マイノリティでした。運動は苦手、人とのコミュニケーションを積極的に取ろうとしない、流行の音楽も聴かない、ただひたすらテレビゲームに没頭している…。集団生活の中におけるマイノリティとはとても弱いものです。なぜ運動ができないだけで馬鹿にされなければならないのだろう。流行の歌なんか聞いてなくてもゲームだけしてちゃいけないの?皆とは違う、皆についていけない疎外感。厳密にはひとりぼっちではないかもしれない、けれど。そんな気持ちを持ったことがある人は意外と多いんじゃないかと思います。
なぜ男の子がスカートを履いてはいけないのか。法律があるわけでも規則があるわけでもないのに、なぜだろう。修一くんの疑問ももっとも。そこには何の理由も無い、ただ "それらしいから" そうなってるだけ。人は常に自由であると言う、しかし現実は真に自由ではない。マイノリティという鳥かごの中で自問自答する主人公・修一くんの姿は、思春期の少年そのものです。無垢で無知、恐れを知らない、そしてそれが美しい。
しかし一方で世界に同じ人は一人としていないのも事実でしょう。つまり誰しもがマイノリティ。では人は誰しもが孤独なのでしょうか。それは半分は真であり半分は偽です。人は誰かに成り代わることはできないけれど、人のことを深く理解してあげることはできる。いや本当に理解することは難しいかもしれないがしかし…その人のことを思いやり理解しようとすることはできるはずです。もしそんな人がもし一人でも現れたら。僕は強く生きていける気がします。
マイノリティが生きる道しるべを探す物語、それが「放浪息子」なのです。
無限の可能性
放浪息子にはマイノリティという一つの軸ともうひとつ、セットで現れる軸があります。
それは「無限の可能性」です。
「子どもには無限の可能性がある」。よく聞く言葉です。マイノリティであるということは、他者とは違う特別な人間であるとも取れます。自分は人とは違う、だから特別な能力が備わっているに違いない。もっと大きく開く可能性があるに違いない…そう思い込むのももっともかもしれませんね。可能性があることは素晴らしいことですし否定はしません、が。可能性は所詮可能性でしかないのです。可能性に甘えてばかりで成長しないのでは何にもなりません。それは逃避です。
かのマリオの生みの親、宮本茂さんの講演を聴いたときに印象に残った話があります。プロジェクトがスタートした段階では、スタッフにゲームが面白くなる可能性をあれやこれやと試させるそうです。プロジェクトを木の幹に例えれば枝が四方からどんどん伸びていく状態です。しかしある一定のところで枝の刈り込みを行わなければ、ただ散漫なものになるばかりで、面白いゲームになることは絶対にないということでした。手塩をかけて伸ばした枝を切る。宮本さんもそれは勇気がいることだと言います。しかし全体像を捉え目標に向けて形を整えなければ、大成することはない。
人も同じではないでしょうか。「無限の可能性」という口当たりのいい言葉に酔って自らの進むべき方法を決めないのは、枝を伸ばしっぱなしにした木と変わりありません。「可能性の枝」を切ること、逃げずに自分を定義すること、それが人の成長なのです。
思春期の少年・少女たちの日常とその中での心の揺れを、水彩タッチの美しい映像で描く。自分がかつて通った場所なのに、繊細に描かれた人物描写の中に新しい発見がある。放浪息子はそんなアニメです。
DVD、Blu-layの1巻がそれぞれリリースされたばかりです。ビデオレンタルも始まりました。ゴールデンウィーク、あまりに暇でレンタルビデオ屋さんに行くことがあったら、ぜひアニメコーナーにいってこのアニメを手に取ってみてください。本心で多くの人に観てもらいたいと思える作品です。

















