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2012年を振り返って。

2013.01.04 Text

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あけましておめでとうございます。あっという間に2013年になってしまいましたので今年も各部門をまとめて発表したいと思います。ただ今年はちょっと映画もアニメも全然見てなかったので薄いランキングではありますが…それでは張り切って、どうぞ!
(ちなみに2011年のまとめはこちら


映画部門

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1位:桐島、部活止めるってよ
http://www.kirishima-movie.com/

僕は運動はできなかった。格好が良くもなかった。明るくもなかった。

学校の中で比べれば、自分より上の人間がいる。常に馬鹿にされているような、押さえつけられるような感覚。その中で小さく、小さく生きていた。そんな学生の頃ずっと味わってきた感覚。苦しかった。辛かった。沸々とした苛立ちの日々。

あれから10数年が経ち、あのときのヒリヒリした感覚だけが残り、冷静さの中であの頃を見つめれば、その「上」やら「下」やらはなんのことはなかったということに気がつく。「下」だった僕はそれに気づけばホッとしたことだろう。だが「上」の人間はどうだ?自分の築いてきた位置、それにかけた努力とは何だったのか、そしてこの先はどうなるのか。パッと、自分を照らしていた照明が消える感覚。本作における桐島の存在は「価値の消失」そのものであり、宏樹の喪失感の象徴だ。

この物語に答えはない。高校生というときを過ごし大人になった人は当然理解している事実であるが、ここで人生は終わらないからだ。変化しながら人生は続く。続く以上次のシーンは白紙であり、その白紙の「進路希望調査用紙」に未来の望みを書き続けるのである。

私のような「下」の人間にとっては息苦しい作品になるのではないか、と不安を感じていたがそれは間違いだった。青さと悩みと希望がないまぜになった瑞々しい映像と、ポップなコメディがこの作品を支配していた。あのときの思い出を振り返れば皆笑顔になるし(劇場のお客さんからは笑い声が絶えなかった)、今思えば「下」の時だってずいぶん笑ってたじゃないか、自分は。

神木くんも橋本愛もそれはそれはかわいらしく、また意地悪な役柄の人も含め、どのキャストの演技も素晴らしかったです。このお話の中で一番残酷なのは「上の人間」でも「下の人間」でもなく「時間」なのかもね。1位を上げるのにふさわしい、快作、いや怪作でありました。

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2位:アベンジャーズ
http://www.marvel-japan.com/movies/avengers/

もう何も言わんでもいいよね。マーベルヒーローまつり。セレブパーティーのシーンとかもうちょっと予算使って〜とか思ったけどまあ怒濤の戦闘シーンを考えれば小さい小さい。みんな強いしかっこいい。個人的に一番アツかったのはワンカットで全部のヒーローの活躍を見せるシーンですね。もうとにかく「こういう人たちがいると、ああこういう絵ができるんだね」と感心しきり。ブラックウィドウがいいのはもうアイアンマン2の時から決まってるわけですが、個人的にはホークアイさんが一番かっこ良かった(ストーリー的にも見せ場多かったしね)んですが皆さんいかがでしょうか。

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3位:おおかみこどもの雨と雪
http://www.ookamikodomo.jp/

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去年は母親のある種の怖さを描いた作品を2本、1位に選びました。おおかみこどもは母親の強さをとにかく描いた作品です。強さは、時にラジカルなものに映ることもあります・ネット上では「あんな母親はむちゃくちゃだ」とか「あんなこと強要されたらたまったもんじゃない」とかね。この映画を撮った監督は子どもを持ってない、だから母親のことをよくわかってない、なんて。確かに細田監督にお子さんはいませんし、これを書いている僕にも子どもはいません。ただ、僕は自分の母親の子どもですし、この地球上に誰かの子どもじゃない人はいないでしょう。必ず誰にも母親はいるのです(不幸があった方はまた別の話になってしまうかもしれませんが)。母親とは奇妙な存在です。なぜあそこまで自分のことを気にかけてくれるのか、理由はわからない、誰かが強要したわけでもない。ただ理由もなくそういうものなのです。

この映画に山場はありません。山場を作る方法はたくさんありますし、当然細田監督も熟知しています。人生を描く映画なら、どの出来事を織り込めば「泣かせられるか」なんてわかりきっていることです。この映画にはそれらしい「セレモニー」は描かれていませんが、冠婚葬祭はすべて日常描写の中に隠蔽されています。我々の日常は、なんとなく過ぎ去っていく。しかしその過ぎ去ってく一日一日こそがかけがえなく、素晴らしい。

エンターテイメントとして、アベンジャーズのようなわかりやすさはない。でもこれを評価しないのは何か後退してしまう気が僕はします。僕はエンディングの10分間、ずっと泣いてました。

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4位:007 スカイフォール
http://www.skyfall.jp

これまでの007的演出は控えめ(ボンドカーとか決めるところは決めてくれてますが)、かっこいいシーケンスの連続にしびれます。途中ちょっとダレるところも感じつつ、いや、それでもしっかり挽回する絵の良さ。中国のネオンの中での戦闘、龍の船に乗ってカジノに乗り込むシーン、そして明け方の戦闘シーンは本当にかっこいい。絵にすることが映画である、と改めて思い知らされました。本作の監督さんがダークナイトを参考にした、というのをどこかで読みましたが、アベンジャーズといいスカイフォールといい、もう完全な定型フォーマットになってるなと。安定はしてるけど悪役の強さに依存するフォーマットではありますね。しかし考えると本作もまた、母の物語。「くだらないかもしれないが最も大切なもの」という"母"が最後に残すメッセージもいいですね。あとQには「爆弾付きボールペンも悪くないぞ」と言っておきたい。

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5位:ダークナイト ライジング
http://wwws.warnerbros.co.jp/batman3/

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ロボットアニメの主人公は必ず最後にはロボットから降りる。自らの足で立ち、生きていく。同様にヒーローもまた社会からいつかは去らなければならない。ではヒーローは社会に対して何を残すのか。それはシステムであり、規範であり、精神である。しかし、それらのものはいつまでも有効なものなのであろうか。時代や社会が変われば有効性は薄れ、そして時に悪として扱われるようになることもある。この映画の中で描かれるのは悪と正義の反転、ループ。愚かだとしてもそのループの中で人はあがき続けなければならない運命なのでしょう。とにかくアン・ハサウェイがかわいかったです。

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?位:ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q
http://www.evangelion.co.jp

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ランキングには入れられない、しかし無視できない映画、ということで。今年はあまり映画は見れませんでしたが、映画が終わってここまで椅子から立ち上がるのが辛い映画はなかったです。刺のように残り続ける作品というのも珍しい。


アニメ部門

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坂道のアポロン
http://www.noitamina-apollon.com

ジャズに情熱を燃やす高校生、薫と千太郎の物語。男女の心の機微、アクションと見まごうリアルな演奏シーン、言うなれば音楽を通して描かれる「喧嘩アニメ」とも言えるかもしれない。現実がハタと目の前に現れたとき、少年たちは我を見失い、その情熱が一体何の意味を持っていたのかわからなくなってしまう。物語終盤、自分のこれまでの行いをすべて投げ出してしまう千太郎はまさに「桐島」であり、その場限りの現実を淡々と受け入れる薫は「前田」(神木君の役ね)である。たとえ僕らが運動部で汗を流そうと、芸術に勤しんだとしても、多くの場合僕たちは何者にもなれない。何者かに慣れるのは情熱と執念に自分の人生をかけた、ほんの一握り、のなかのほんの一握りの人間のみなのだ。大人になればそういった生きるため以外の行いはすべて「趣味」と呼ばれてしまうのかもしれない。でもそんな小さな行いが、平坦な人生にちょっとだけ坂道を作ってくれる、キラキラとした存在なのだということに大人になると気がつけるようになるのである。

菅野よう子によるサウンドトラック、そして若きピアニストとドラマーによる生の演奏、実際の演奏風景を撮影しそこからアニメに1コマずつ落とし込んでいくという途方もない作業…美しい青春の風景がこれだけの豪華さで表現されるだけでも見る価値はあると思います。


ゲーム部門

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風ノ旅ビト(原題:Journey)
http://www.jp.playstation.com/scej/title/kazenotabibito/

セリフはない。言葉もない。あるのは広陵とした砂漠に民族衣装を着た人影が一つ。ゲームのグラフィックがこれだけ向上した現代において、ゲームと映画の違いとは何だろう。もちろん、ゲームはインタラクティブであるということであり、自らで操作することによって物語を生み出すメディアである。ドラクエやFFが優れたストーリーテリングで人を惹きつけるのとは逆に、ゼルダの伝説はユーザーのプレイと試行錯誤の中で自然とストーリーを作り上げていった。この風ノ旅ビトもまたプレイヤーの行いが自分の中に物語を形成していく。プレイヤーは何のために砂漠を歩き、先に進むのか、わからないまま旅を続ける。時に命の危険を晒すような旅も、やがて一人ではない、命の大きな物語であるということに気がつかされるのである。これはとにかく遊んで体験してほしい!!

音楽、映像ともに素晴らしく、特に日に照らされた砂漠の煌めきは溜息が漏れる。1200円のPS3ダウンロード専用タイトルではあるが2012年を代表する最高の一本であることは間違いないでしょう。

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次点:新・光神話 パルテナの鏡
http://www.nintendo.co.jp/3ds/akdj/

贅沢だよねこれは。贅沢です。飛べない天使ピット君を操作し空中戦のAパート、地上戦のBパートを戦い抜くアクションシューティングゲーム。ピット君を操作して敵を倒すのと同時並行で、悪の女神・メデューサと光の女神・パルテナ、そしてピット君らのアニメ的やり取りが行われる。ただのアクションゲームではなく、かといって物語を読み進めさせるだけのノベルゲーでもない。演出とゲームがここまで高度に融合した作品はそうそうないのではないか。ストーリーテリングはややアニメ的すぎるきらいがあるものの、サービス精神旺盛な演出と、桜井さんの独特の「正義観」も相まって次へ次へと進めたくなる欲求に駆られる。アクションの内容も相変わらずの「絶妙なクセの付け方」。うまくなりたい、と思わせるバランス。これだけ贅沢なゲームってほんと、なかなかないですよ。

音楽部門

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宇多田ヒカル『桜流し』
http://www.sakuranagashi.jp/

僕らは言いたいことはいつでも言える。どこでも、誰にでも。場所や時間を限らず、世界中に自分の言葉を届けることができるようになった。一つのつぶやき、一つの走り書きが世界を駆け巡る時代。言いたいことが簡単に伝えられる今という時代において、改めて「表現する」意味とは何なのだろうか。ましてやかの宇多田ヒカルである。彼女のTwitterアカウントには数多くのフォロワーがいて、メディアも常に彼女の行動を見続けている。彼女の一言は間違いなく多くの人に届く。

この曲は映画の主題歌ではあるが、監督からは特にないようにそったものを作らず、今あなたが表現したいと思ったことを歌にしてくれと言われたという。監督のリードが全くなかった、とは言い切れないが結果として彼女が作った曲は多くの人の命が失われた悲劇に対する鎮魂歌であった。

彼女はずっと、歌わなければならないと思っていたのだ。あのときから。

あの悲劇から月日が流れても、悲しい出来事に直接言及する機会がたくさんあったとしても、歌にしなければならない、表現しなければならないと思っていたのだ。同じことを伝えるなら歌でなくてもできる、今すぐ同じ意味の言葉をポンとそこに置けばいいだけなのに、彼女は歌で表現することに向かう。彼女は以前自分の活動を不自然な状態と定義し歌うことを止め「人間活動」を始めていた。しかしどうだろう、一見不合理な「表現すること」こそが実はきわめて人間的な営みだったのではないのか。自分の想いを伝え、ともに歌い、慰めあう。これこそが人間の持つ表現の力であり、誰もそれを止めることはできない。『桜流し』という曲の素晴らしさもさることながら、人が表現する根源を考えるきっかけにもなったと思います。


主演女優賞(非実在部門)

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組み合わせ爆発のお姉さん

科学未来館のコンテンツ「『フカシギの数え方』 おねえさんといっしょ! みんなで数えてみよう!」に登場する、"組み合わせ爆発" の素晴らしさを子どもたちに伝えるため奮戦するお姉さん。あなたが今年の主演女優賞(非実在部門)ですよ!おめでとうございます!最初はちょっとした教材DVDのお姉さんだったのが、徐々に狂気を増していく。組み合わせ爆発にかける情熱、そして生徒への愛。感動です。

主演女優賞(実在部門)

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橋本愛

いまさらかよという突っ込みを受けそうですが(2年前の『告白』の時点ででしょうがと)、今年は桐島もありましたし東京ガスのCMもとってもよかった。映画『アナザー Another』の新津保さんが撮った写真集とかも買っちゃおうかなとか思う勢いです。


どうぶつ部門

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あしのみじかいねこ

Photoshopで作ったんじゃないかと思うくらいいい写真。ちょこちょこ歩いてる姿なんかを想像してもまたよし。


プロダクト部門

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Apple『EarPods』

Appleが生み出すプロダクトはクオリティが高く、誰にもまねできない製品だ。しかし多くの場合勘違いしがちなのが彼らが高級品を作っているわけではないということだ。Appleが販売する最も安いディスプレイ付きMacはMacBook Air。あのクオリティのアルミ筐体と十分なパフォーマンスを持つ製品を84,800円で買うことができる。しかし他社がほぼ同様のものを作ろうとしたらとたんに "高級品" になってしまうのである。Appleが作るのは "普通" の中で実現できる最上のプロダクトなのである。

で、EarPodsである。今まで見たことのないフォルムのこのイヤフォンは「白いイヤフォン」というアイコンを作り出したAppleの、新しいアイコンだ。一目見てAppleのものだとわかるフォルム。ハイエンドオーディオではないが、迫力のある低音といい音を出す。カナル型のようなゴムパーツを必要としない。が従来のApple純正イヤフォンよりも音漏れしにくい。耳の形は人それぞれなのでこの形状が必ずしもベストではないかもしれないが、少なくとも私の耳にはすっぽりと納まり、きつすぎず緩すぎない適度な装着感がある。そして何より…価格が2,800円であることは忘れてはいけないポイントだろう。

決して高級品ではない、しかし合理的なアイデアと優れたデザイン、十二分な性能がそろった、2012年でも最もAppleらしいプロダクトがEarPodsでした。

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2012年は正直インプット不足でした…もっと斜めなチョイスがしたかったんですが余裕がなかったですね。2013年はもっとたくさん遊びたい!

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