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トリロジーが完成するとき、ゴッサムシティはアウターヘブンへ変貌する - 「ダークナイト ライジング」

2012.08.04 Movie

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ダークナイト ライジングの軸は二つある。「都市とは虚構であるということ」と「ブルース・ウェインの自立」。この二つが重層的に絡み合いながら新バットマントリロジーは完結する。

小島秀夫監督制作のゲーム「メタルギア」シリーズの中でMETAL GEAR SOLID 2(以下MGS2)は世間的な理合をあまり得られなかったタイトルである。が、そこで扱われたテーマというものはとても良くできた素晴らしいものであったことを伊藤計劃氏の解説で知ったのはいつのことだったか。そして後に氏のブログに影響されて観に行ったダークナイトの衝撃。僕に映画の面白さをブログを通して教えてくれたのも氏でした。

MGS2の舞台がニューヨークに設定された理由を伊藤計劃氏は確か「都市は虚構であり、その最たるものがニューヨークだからだ」と分析していた。都市とは、自然という想像不能なカオスなものから自らの身を守るために作った要塞である、自然の対局に存在する虚構の集合体。人の都合が人を支配する偽りの世界。どうせ虚構を表現するならニューヨークよりもぴったりな場所がある。ゴッサムシティだ。

偽りの英雄を祭りたて、犯罪を撲滅する一方、金持ちは幅を利かせ、貧しきものは富めるものに小さな希望をちらつかせられながら搾取されるキャピタリズムの中心地、ゴッサムシティ。ここは自由の国アメリカじゃないのか?300年前の独立の高潔な精神はどこへ消えたんだ?ベインの疑問は一つの計画となって結実する。

アメリカに対して同じ疑問を持った者達がいる。MGS2に登場するソリダス・スネーク、そして彼が擁する「サンズ・オブ・リバティ」と名乗るテロリストはニューヨーク上空で純粋水爆を爆発させて電子通信能力を破壊し、ニューヨークを陸の孤島に化させ、そこに独立国家「アウターヘブン」を設立しようとする。解き放たれた真の自由の国。残念ながら彼らの願いは体制側の圧倒的な力で破壊されてしまった。

しかし今回の悪役ベインが行った蜂起は、小島監督が描けなかった、もといソリダスが叶えられなかった真の自由への夢をあっさりと実現してしまった。アメリカ国歌が少年によって歌われる中。ゲームの中の映像ではなく映画の中で。

あくまで私の考えすぎな仮説ではあるが、この映画の目的の一つとしてMGS2のサイドBを作ることにあったのではないか。ストーリー的にも描写的にもMGS2を思わせるシーンが多く出てくる(決戦の舞台がフェデラルホールに見えてきませんかね…?)。ダークナイトではMGS3のフルトン回収、インセプションの夢の第三階層は明らかにシャドーモセス島だった。もしかすると今作はノーラン監督の小島監督LOVEが文字通り「爆発」した作品だと僕は勝手に思っています、がもちろん僕の考え過ぎの可能性も多いにあるので鵜呑みにしないでね。

…と、ノーラン監督の小島監督への思いが本当にあるのはさておき、少なくとも「都市は虚構である」というテーマを描き出すことが目的なのは事実だろう。 そもそもが虚構の街ゴッサムシティの、虚構の正義が崩れ去り、新たな虚構の支配が生まれる。こんなとんでもない話を、誰もが受け止められるように描くのは至難の技だ。今思えばノーラン監督のインセプションは今作のプロトタイプだったのだろう。インセプションが描いた夢の世界は当然虚構だし、その虚構のイメージは必ず都市の姿を持って現れる。渡辺謙扮するサイトーが住んでいた、虚構の中に生まれた砂上の楼閣が描けたところで、彼が次に描こうとしたのは都市の虚構が暴かれ、価値が逆転し、孤立し、権力から独立した戦士達の真の自由国家「アウターヘブン」と化したゴッサムシティだ。そのためにベイン達は何をしたか。彼らはウェインタワーもツインビルも破壊しなかった。象徴的な建物を破壊する代わりに彼らはただ壁や床に穴を開けまくったんです。構造を破壊し、人為的に隔てられたものを等しくする。「上下」の位置を等しくする(ライジングは徹底的に上下で描き分けられている)。市民のための市民により自治された街。政府や誰かの道具として生きるのではない真の現実の世界がスクリーンの中に登場するのです。

この映画もう一つの軸は当然バットマンことブルースウェインの人間としての自立です。喜び勇んでバッマンに戻って行くブルースはまさにかろうじて引き分けに持っていったジョーカーとの勝負を無下にするものであり、彼が虚構の破壊の一端を担うことになってしまうのは当然の帰結とも言えるでしょう。彼が犯罪者の敵であるのか、ただの変態コスプレ男であるか、この差を決定するのはブルースの金持ち具合なのか?それは違うでしょう、というのが今回バットマンに与えられたミッションなのです。ゴッサムシティで一般市民と警官達を分ける差は正義に対する崇高な精神であったように。

これまでコミック、テレビ、映画の中でいく度もなく描かれたバットマン。ノーラン版バットマンのように陰鬱なものもあれば、子どもたちのヒーローとして描かれることも多々ありました。ノーラン版ブルース・ウェインが最後のシーンでゴッサムシティに残したのは、これまで描かれてきた子どもたちの正義のヒーロー・バットマンへのあいさつなのです。

忘れちゃならない見所。そりゃあアン・ハサウェイ演じるセリーナ・カイルでしょうな。キャットウーマンとあえて呼ばれないのは爪を立てたりにゃんにゃんしたりしないからでしょうね。とにかくセクシーかつカッコいい。メイド姿のアン・ハサウェイ、サイダースーツ姿のアン・ハサウェイ。今回も変態メカのオンパレードですが、バットポットを駆るセリーナ・カイルもとってもいい。前回垂直ターンをキメてくれたバットポットですが今回はまさかのドリフトをキメてくれます。

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