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ニンテンドー3DS LLを買うのは一体誰なのか

2012.06.28 Game

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電車内、子どもたちが真剣な眼差しでニンテンドーDSで遊んでいる。最新型の3DSの姿も最近では目立つようになってきた。が、その中でもとりわけ子どもたちの体格の大きさに不釣り合いな、巨大なDSがよく目立つ。ニンテンドーDSi LLである。

ニンテンドーDSi LLとは「ただ単に画面が大きくなったDS」である。それ以外の特殊な機能は一切ない、重くてデカい(そして今や旧型の)DSだ。コアなゲームファンほど存在意義が見出せないモデルである。そもそもニンテンドーは目が見えずらい高齢者に向けた家用ラインナップとしてこのDSi LLを開発した。しかしそれにしてはそのターゲットとは程遠い子どもたちが遊んでいるのを実際にはよく目にする。

なぜ大きくて操作もし辛かろう、落ち運びも面倒な旧型のDSi LLを子どもたちが使うのか。いやもっと正確にいえばなぜ親たちは子どもにDSi LLを買うのか。きっと親たちはこう思っているのだ。「ゲームは目に悪い。なら少しでも目に悪くなさそうな大きな画面のDSがいい」。たったこれだけの理由である。

ネットの口コミを見ても「子どもの視力が心配で普通のDSではなくDSi LLを買った」という声が多い。任天堂も当初の目的とは違う需要のあまりの灯台下暗しぶりに驚いたかもしれない。

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さて、今回の本題はニンテンドー3DS LLである。例によって3DSがデカくなっただけの本製品であるが、今度のプレスリリースにはお年の方向けといった文章は一切出てこない。3DS LLの開発はおそらく通常の3DSと同時並行で進んでいたのだろう。何せ3DSは裸眼立体視が売りのただでさえ「目に悪そうな」ゲーム機だ。本当に目に悪いかどうかは不明で、あくまでイメージではあるのだが親が "子どものためを思って" 購入をためらうには十分な理由だろう。ネットでは「本当は3DSを買ってあげたいけどもやっぱり目への影響を考えてDSi LLを買った」という声も聞かれた。子どもの視力を心配する親が3DSの普及を妨げてしまう…しかもその相手は任天堂が最も最新のゲーム機を届けたい子どもたちである。

3DS普及のためならその障壁になるものはすべて飛び越えなければならない。当然その価格も障壁の一つ。通常の3DSと3,900円しか変わらない価格も、アダプタ(DSiや3DSのアダプタが使いまわせる)やその他付属品の別売り化、そしてコストダウンされた本体のエクステリアのおかげだろう。個人的には通常の3DSよりも任天堂らしいデザインになったように思う。僕は3色あるなかでもホワイトが欲しいね。

しかしなぜ子どもたちが任天堂にとって最も重要な顧客なのか。その答えがちょうどE3のQ&Aセッションでやり取りされた一つのWii Uに関する質問に詰まっている。

Q: もしもWii Uが期待ほどの成功を収めることができなかった場合、マリオやゼルダを経験せずに大人になる年齢層が生じてしまうことになる。そのような場合、御社の知的財産の価値が下がってしまうことにならないか。

岩田:まず、そのようなことに対する自信がなくなったら、私は社長業を続けていてはいけないので、その前提でものごとは考えておりません。そうではなくて、どうやってWii Uをたくさんの人に認めてもらうか、そして私たちには複数のプラットフォームでビジネスをしていくという手段がございますので、いろいろな想定外のことが起こっても、それを取り戻してやっていくためにさまざまなことを考えて、私はこの役割を務めています。私には、任天堂のフランチャイズの価値をきちんと高く維持する自信もございます。


任天堂が保有する財産は大量のキャッシュフローだけではない。「マリオを知らない子どもたち」が生まれた瞬間に任天堂の保有する知的財産はみるみるうちに失われていく。

子どもたちが任天堂のゲームを遊び、彼らが大人になって自分の子どもに遊ばせるのがまた任天堂のゲームなら…この会社の価値は維持され続ける。そのために大切なのは子どもの興味よりも親の理解。本当に3DSより3DS LLの方が目に悪くないのかはわからない。それでも子どもを想う親が説得できるならそれでいいのだ。例えそれが釈然としない理由であっても。

なぜWii Uの液晶パネルはマルチタッチではないのか

2012.06.26 Game

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E3で遂に完成版がお披露目された任天堂のWii U。特徴はもちろん液晶がついたWii Uゲームパッドだ。この液晶はニンテンドーDSと同じように感圧式のタッチパネルになっている。タッチパネルといえば今時は静電容量式のマルチタッチタイプが普通、にも関わらずWii Uが採用したのは1点しか入力が取れないオールディな感圧式。INSIDEでは米任天堂のレジー社長が「マルチタッチパネルはコストが高くゲームの操作も難しい」と説明しているが、僕は個人的には「ペンが使えるから」だと思っている。

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マルチタッチ液晶を搭載したiPhoneを皮切りに、市場に出回るモバイルデバイスのタッチパネルのほとんどは静電容量式のマルチタッチ対応パネルになった。iPhone、iPad、各種Android端末、そしてライバル社の製品であるPS Vitaも(Vitaに至っては画面だけでなくゲーム機裏面までマルチタッチ!! )。

マルチタッチの素晴らしさは私が説明するまでもなく、従来の感圧式では1点しか取れなかったポイントが2点以上取れることで、もっと複雑な操作ができるようになることだ。例えば二本の指を開いて写真の拡大縮小するように。

もはや世の中で常識とも言えるマルチタッチパネル、任天堂が導入しないのは確かに前述の通りコストの問題もあるかもしれない。ゲームに落とし込むのに多点入力はそこまで必要じゃないかもしれない。しかしそれよりも何よりも、任天堂がマルチタッチに魅力を感じないのは「ペンが使えないから」に他ならないのではないか。Galaxy Noteなど一部の端末を除いて世の中のマルチタッチ液晶のほとんどはデフォルトでペン入力に対応していない。マルチタッチ液晶用の「指の代わりペン」はたくさん存在するが、ペン先が太く細かい操作は難しい。やはりあくまで指の代わりでしかなく正確な動作はあまり望めない。仮にペン先が細い専用のペンが使えるマルチタッチ液晶をWii Uに採用しようと思えばそれこそ「コストの上昇」は避けられない。

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しかしなぜそこまでペン入力にこだわるか。それはペンを導入することでゲーム企画の幅がグッと広がるからだ。一世を風靡した「脳トレ」もペンで手書き入力という発想が無ければあそこまでヒットしなかったかもしれない。文字を書く、絵を描く、図形を描く…DS世代の多種多様なゲーム企画の誕生を支えたのは実はペンによるところが大きいのではないだろうか。

マルチタッチで広がる操作もある。しかし新しいゲームを生むために本当に必要なものは何なのか、何が大切なのか。「アイデアとは2つの問題を同時に解決するものである」とはかの宮本茂氏の言葉であるが、任天堂が従来の感圧式のタッチパネルを採用することによって、コストダウン、従来の開発ノウハウを活かすのと同時に競合他社が手を付けていないペン入力可能なゲーム機というポジションを確固とすることができる。その結果この冬から任天堂の全現行ハードがペン入力を標準サポートする。もはやこれはAppleもSONYもMicrosoftも、どのゲームハードメーカーも持たない任天堂だけの強力なブランドなのだ。

本当にペンは剣より強いのかはさておき、枯れた技術の水平思考はまだまだ枯れない。

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