アニメ「TIGER&BUNNY」はプロダクトプレイスメントの最先端!
アニメに登場するヒーロの胸には「Softbank」の文字
全シーズンは「まど☆マギ」で大騒ぎだったアニメ界もシーズンが新しくなり一段落(僕の前シーズン一押しは「放浪息子」だったんですがその話は次回に。絶っっっっっ対おすすめなんですよ!)。そんな中ひと際異彩を放つアニメがあります。「TIGER&BUNNY(タイガー&バニー)」です。現在バンダイチャンネルで第一話が無料配信中ですが、実はこのアニメには新しい "広告手法" が導入されているのをですがそれを知らない人も多いかもしれません。
物語の舞台は未来都市、そこでは特殊能力を持ったヒーローたちが日夜悪を懲らしめる…その様子はテレビを通して放映され、ヒーローには働き次第でポイントが加算されるというヒーローリーグが娯楽として消費されている世界。ヒーローリーグを構成しているのはヒーローたちとメディア、そしてヒーローをバックアップするスポンサー。主人公のワイルドタイガーはヒーロー歴10年のベテラン選手、しかし時代の波には勝てずスポンサーに解雇されてしまい…というお話。ヒーローとメディアの他にスポンサーが絡んでくる、というのはなかなか珍しい話ですが珍しい話はここで終わりません。このアニメに登場するヒーローたちの姿をよく見ると…

なんと現実世界の「Softbank」や「PEPSI NEX」「カルビー」「USTREAM」といった企業名が描かれているではありませんか!「BANDAI」「DMM.com」といったアニメに近い業種のロゴもありますが、中には「牛角」といった外食業界のものまであります。つまり、このアニメの制作にこれらの企業がお金を出し、その見返りとしてヒーローたちのデザインの中に実在企業のロゴが登場している、というわけですね。よく野球やサッカーの選手が着るユニホームにスポンサー企業のロゴが印刷されていることはあります。しかしアニメの中の架空のキャラクターに実在企業のロゴがスポンサーとして登場するのは初めてのことじゃないでしょうか。これはプロダクトプレイスメントの最新事例と言えるでしょう。
プロダクトプレイスメントとは何か
プロダクトプレイスメント。聞き覚えのない方もいらっしゃるかもしれませんが、ざっくり言うと「架空のストーリーの中に実在の商品を登場させる広告手法の一つ」です。日本では「コラボ」という言い方をされることも多いです。世界で一番有名なプロダクトプレイスメントといえば映画007シリーズの「ボンドカー」ではないでしょうか。主人公の凄腕スパイ、ジェームス・ボンドが乗る車はいつも超高性能で秘密武器が搭載されているむっちゃかっこいい車ですが、映画ごとに各高級車メーカーの最新・最高車種があてがわれています。つまり「あのボンドが運転した車」ということで大きな宣伝効果があるわけです。

プロダクトプレイスメント自体はある意味枯れた手法で、実は事例が数えきれないほどあります。去年公開されたヒット映画「アイアンマン2」では史上最大のプロダクトリプレイスメントと呼ばれるほど多くの企業の商品が劇中に登場します。アウディ、デルといった企業の商品が実物として登場します。つまりどれも「イケメンカリスマ長お金持ち天才社長、トニー・スタークのお墨付きですよ」というわけです。

プロダクトプレイスメントがある意味もっとも効果的に効くのはゲームの世界です。PS3用ゲームソフト「メタルギアソリッド4」では回復アイテムとして栄養補給材のリゲインがパッケージそのままで登場します。「24時間戦えますか」でおなじみのリゲインですが主人公のソリッド・スネークも戦場で戦い続ける男。ゲームの中での効果と現実世界での製品の効能が見事にリンクした広告と言えるでしょう。
ヒーローは "企業を" 裏切らない
さて、再び話を「TIGER&BUNNY」に戻すとして。実物のスポーツ選手などではなく架空のヒーローのスポンサーになる、というのは実はとても効率がいいことに気がついたでしょうか。例えばある人気スポーツ選手が多くのCMに出演していたり、企業と契約していたとします。その人がもし暴行事件を起こしたり、異性との交際問題などでやり玉に上がってしまったとき、その人と契約をしていたスポンサー企業は「悪の手助けをしていた」などと叩かれかねません(そういう光景をテレビで何度となく見てきました、よね?)。人のイメージなど事件の一つで一瞬で変わってしまうものです。その点架空のヒーローならばお話の展開を調整することでいくらでもコントロールが可能です。さらに企業のイメージに見合うキャラクター作りも自由自在。

TIGER&BUNNYの中でもアイドル的存在として登場するブルーローズに入っているロゴはPEPSI NEX。スタイル抜群の彼女ならPEPSI NEXの「ノーカロリー」のイメージが見事にマッチする。PEPSI NEXのCMはPerfumeや宇多田ヒカルなど女性ミュージシャンが多く登場しますが、ブルーローズも歌が人気のアーティストでもあるという設定。また、PEPSIのコアバリューと言えばすっきりとした清涼感。ブルーローズの得技が氷を操る能力なのも納得です。まさに、アニメの中ならヒーローは作れる。しかも企業にぴったりな一人を。
「スポンサー型プロダクトプレイスメント」がアニメを救う?広告を変える?
さらにアニメのヒーローのスポンサーになるメリットはここで終わりません。TIGER&BUNNYは深夜アニメですが、もしこれがポケモンのような児童向け作品だったらどうでしょう。人形やプラモデル、カードゲーム、テレビゲームといったおもちゃ、派生商品が大量に出回ることになります。そのすべてにスポンサーロゴが入っているところを想像したら…すごいことになりますよね。子どもが遊んでいるヒーローのソフビ人形にもSoftbankロゴ、カードゲームにもSoftbankロゴ…子どもたちの記憶に残るものですから、長期的なブランディングに貢献することでしょう。
もちろん企業にお金を出してもらう以上、アニメ制作の現場では企業の意見を大きく反映せざるを得なくなります。キャラクターデザインだけでなく、ストーリーの内容にまで深く意見を出すことになる。企業の広報もまた一つ新しい仕事が増えると同時に、アニメ制作の現場では新たな制約になる。アニメ制作の自由が奪われるのは事実でしょう。
しかし深夜アニメの収入源はほぼDVD/Blu-ray、もしくはサントラからのものといわれています。制作業が成り立たなければ作品が生まれる土壌もなくなる。この「スポンサー型プロダクトプレイスメント」がアニメ業界を救う一手になるかもしれません。そして企業の広告、ブランディングの新たな手法として根付いていくかもしれませんね。