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AKB48と「痛くない注射針」 - グッドデザインの行方を巡って

2010.10.01

写真は2005年度のグッドデザイン大賞を受賞したテルモ株式会社の「インスリン用注射針」。従来型の注射針よりも20%細い、簡単に言えば「痛くない注射針」である。もちろん細くすればその分、液の通りも(本来ならば)悪くなるわけで、それを見事技術的にクリアしたすばらしいプロダクトだ。注射が大の苦手な私としては、日常的にインスリン注射をしなければならない友人がいることもあり、この注射針のグッドデザイン賞大賞受賞は個人的にも大賛成だった。…が、世間では「それはデザインと言えるのか?」「それはテクノロジーの功績であってデザインではない」といった意見も見られた。果たして、痛くない注射針はグッドデザインと言えるのだろうか?

ではそもそも、デザインとは何だろう。

この問いに答えるのは難しい。無駄なものをそぎ落としシンプルにする行為のことか。美的感覚をくすぐる意匠を作り上げることか。使い勝手を第一に考えてモノの創造することか。人と場合によってこの定義は大きく異なってくる。が、私の解釈ではデザインの極限まで広く解釈した場合、以下の言葉で表現される。

デザインとは「人を操ること」である。

人を操る、と言うと何か黒いものを感じてしまうかもしれないがおかしなことではない。人を操ることに関しては以前GWの話をしたが、ここはおなじみ無印良品の壁掛け型CDプレイヤーを例にとろう。

good_design_2010_1.jpg

ユーザーは自然と本体から垂れるケーブルを手に取る。そして引っ張る。CDが再生される。ユーザーは一目見た瞬間にこのCDプレイヤーの再生方法を理解させられる。さらにこのCDプレイヤーの場合、シンプルで美しい見た目が持ち主の所有欲を満たす。CDがむき出しになっているためどんなCDがセットされているか、動いているか止まっているか瞬時に分かる。プレイヤー本体とCDのレーベル面がインテリアとして機能し、自然と音楽をかけたくなる気持ちにさせてくれる。

優れたデザインには意図がある。そして自然と使い手の気持ちを誘発し、行動を起こさせる。人を操るのに催眠術も超能力も必要ない。デザインがあればいい。

では「いいデザイン」とはなんだろう。

前段の話からすれば「人をうまく操ること」となるが、その操る力が他者を不快にさせたり、迷惑になったりと悪い方向に向いてしまっては何の意味もない。あくまで私の解釈ではありますが、「いいデザイン」とは即ち「意思を持って人を導き、人を豊かにする」こと。とすれば、冒頭の痛くない注射針は、苦しみを無くすために痛いのを我慢するという矛盾を解消し、糖尿病治療を進めることを容易にする、立派なグッドデザインである。誰も好き好んで注射したいという人はいないのだから。

good_design_2010_3.jpg

さて、今年2010年度のグッドデザイン賞ではAKB48がグッドデザイン賞を受賞した。恐らくアイドルとしは初、しかもベスト15入りという大快挙。しかし本当にこの受賞が適切なのかどうか、疑問視する声も多い。

AKB48は本当に「グッドデザイン」なのか。

残念ながら私自身、AKB48にそれほど詳しくないためそもそも彼女たちを語る資格もないのかもしれないが、先程の「デザイン」=「人を操ること」の定義からすれば、AKB48は極めて素晴らしいスコアを叩き出している。人をファンにさせる力、その人に応援させる力、そしてそれを支えるためにファンにCDをはじめとしたグッズを購買させる力。それがさらには社会現象化し、広告主を魅了し、巨大な経済効果を生み出し、派生・類似アイドルグループもまた次々に誕生した。それはAKB48の個人個人の力というよりは、システムによる部分が大きい。いや彼女たち自身もそのシステムによって大きく成長したのだ。人の気持ちに作用し行動を起こさせるシステム、それも日本中を巻き込む規模の…先の定義からすれば、十分に「デザインされている」と言えるだろう。

ではそれが「グッドデザイン」なのかどうか、それは正直僕にはわからない。人や社会を本質的に豊かにしたかどうか、私の視点からそれを確認することは難しい。私は社会に貢献する「善いデザイン」とは思えないが、彼女たちの活動に強く勇気付けられた人もいる。

そして彼女たちが、デザインが持つ力を改めて確認させてくれたのも事実だろう。デザインとは人を操り行動に導く、強力な力を持っていることを忘れてはならない。デザイナーはAKB48を超える影響力を持つデザインを作り出す、それ位の気概があってもいいはずだ。「強く、善いデザイン」がこれからも日本から誕生することを楽しみにしている。

以上、デザイナーでもなんでもない、口先だけの男からのメッセージでした。

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