「空気人形」 - 僕ら人間、心なんて持たないほうがよかった。よかったんだよ。
2009.10.13 Movie
まず一言言わせてくれ。「ペ・ドゥナたんカワユス」
この映画は心を持ってしまった空気人形(おとなの男のひとが使うタイプのね。)のお話。普段このブログでは「ザッツ・エンターテイメント」的な映画を主に紹介していますが、この「空気人形」は比較的たんたんと進む「見る映画」です。映画的カタルシスを楽しむというよりも、美しい絵と優しくてほろ苦いストーリーをゆっくり堪能する映画と言えるでしょう。
まず何よりも最初に言っておきたいことは、ペ・ドゥナたん(気持ち悪いと思われるかもしれませんがあえて私は "たん" 付けで私は呼びたい)が殺人的にかわいい。これ、容姿云々とかそういう問題じゃないんです。てくてく人形歩きする仕草がかわいい。たどたどしく発する言葉もかわいい。その様子はまさに人形そのもの。イノセンスの塊、空気人形というおとぎ話のヒロインを見事に演じきっています。この映画の魅力の半分を担保しているといっても過言ではないです。
で注意点なんですが、性的な用途の人形である以上、どうしてもそういうシーンとは切っても切り離せないのがこの映画(ちなみに15歳以上じゃないと観れないぞ☆)。なのでペ・ドゥナたんの "全体像"(主に上の方、ね)がだいたい見えちゃってます。が、人形の演技に徹しているからか、不思議とそんなにいやらしくない。女の人が見てもそこまで抵抗は無いんじゃないかなと。twitterでも女の人の方が多く観にいっている印象ですしね。個人的には空気入れを使って自分で空気を入れているシーンがセクシーでよかったです。なんだか不思議なセクシーですが。
また空気人形の持ち主を演じているのは板尾創路さん。もの言わぬ空気人形を心の支えにする男性の役。どこか上の空で、まっすぐ前を向いていない演技がとてもよかった。あとサマーウォーズで気丈なおばあちゃん役を演じられた富司純子さんも出演されてますね。
心を持ったことは幸せだったのか、それともこんなもの持つべきじゃなかったのか。
以前私はロボットと人間の決定的な差のお話をしました。ロボット(人形)には人間が持つ心がない、だから両者の溝は埋められない。じゃあ実際に人形が心を持ったら、どうなるんだろう?
心を持った空気人形である彼女は、自分の意志を持って持ち主の家を飛び出す。彼女が初めて触れる世界には、驚きと美しさに満ちあふれている。これは心があるから感じられる世界。そして持ち主以外の人とふれあうことで、人は傷つきながらも歳をとること、人も自分と同じで空っぽだということ、そして人を好きになる気持ちを学んでいく。どれも心があるから、感じられること。心とはとても尊い存在。しかし今まで相手に何をされても感じることの無かった嫌悪感や、人を裏切る罪の気持ちも感じるようになってしまいます。心は面倒な存在。
そう。もしかしたら心なんかない方がよかったのかもしれない。心を持った人形なんて、人間と変わりないじゃないか…!! そもそも彼女の持ち主は、人間みたく面倒じゃないから人形を選んだのに。悲しいことだけれど、男の人はどこかでそれを望んでいる部分があるのかもしれない。もし人形相手に好きなことをして、好きなことを好きなだけ喋れたらどんなに楽だろう。もし何もかも捨て去ってラブプラスに没頭し続けることができたらどんなに楽しいことだろう。私だったら寧々ちゃんと…いやいやラブプラスの話は置いておいておくにしても、なんだこれで十分満足じゃん。
心が擦れ合って痛いから、生きてるって感じてる。
そうだよ人間の "代用品" でいいんだよ。心なんて最初からいらなかった。いらなかった。 だから物語の中で空気人形が苦しいときには、心の中で自分が性欲処理の "代用品" であることを言い聞かせる。人形なら何も感じない、何も苦しむこともない…。しかし "代用品" ではない心を持った人間は、心を通わせるが故に人を傷つけてしまうし、傷つけてしまう。お互いを想う気持ちが深ければ深いほど、心のコアに近づいていく。「ゼロ距離射撃」に近づいていく。痛みを感じながら、人を傷つけた罪の意識に耐えてまで、人は心にこだわる必要はあるのか?
ある。自信を持ってあると言える。なぜなら心が擦れ合わなければ人は変わらない。自分が変わらなければ、見える景色は変わらない。美しい景色は移り往くから価値がある。美しいものは朽ちていくし、朽ちていくから美しいと言える。そしてそれが人が歳をとるということだという。逆に空気人形の持ち主の部屋を見れば彼の幼さに気がつくはず。身をすり減らしても前へ進む、これが生きることだとこの映画は訴えかけている。
しかし最近涙もろくなったと思いますが、本当に苦しいと涙も出ないんだということに気がつきました。この映画はかわいくて美しいものだけど、正直言って私にとっては苦しかった。特に私が男だったからかもしれません。どうしても内省的な気持ちになる部分もあります。「空気人形」は小さなトゲのように胸に痛みを残しながら、我々の生きている世界はどんなに素敵かを教えてくれる映画であります。
(※ごめんこんだけ話しておいて私ラブプラス持ってないんだぜ…)