新しいiMacはAppleが作り上げた究極の「テレビ」である。

私にとって最高の "据え置き型PC" はいつもiMacだった
自分の人生の中で最高の据え置き型PCは何か?と聞かれれば、私はキャンディー型をした初代iMacを挙げるでしょう。当時の常識を覆す驚きのデザイン、そして何より高校1年生の私が初めて所有することになったMacだからです。初めてホームページを作り、デザインの世界に触れ、友達と深夜までメッセージを交換した思い出は何ものにも代え難い記憶です。頭を痛ませるフリーズの嵐も、長い月日と思い出にかかれば見事に美化されるものです。
では翻って10年経った現在。最高の据え置き型PCとは何か?と聞かれれば間違いなく今日発表された新しいiMacを推すでしょう。ぱっと見たところでは従来のiMacと違いを挙げるのは難しいかもしれません。しかし大きな変化が新しいiMacには隠されています。
Appleにとって「美しい」とは「限りなくシンプル」であることiMacが現在のようなスタンド型になって5年。デザインも純白のポリカーボネイト製ボディからアルミニウムボディへと大きく進化していきました。そして今回の新しいiMacですが、相変わらずアルミの本体にガラスの画面、黒い液晶周り…何も変わらないように感じます。今回のiMacを新しくデザインするにあたって、Appleは今までのデザインを大きく変えることを選択しませんでした。Appleにとって「美しい」ということは「限りなくシンプル」であることです。MacBook Proのリデザインと同様、これまでのアルミボディをさらにシンプルに突き詰めることでさらに完成度を高める道を選びました。簡単に言えば、目につく無駄なディティール、無意味なパーツを排除していく作業です。

新しいiMacを見て一番最初に気がつくことは、正面から見える画面周りのわずかなアルミのふちを取り除いたことです。これでiMacの本体ははっきりと黒い部分と銀色の部分に分かれました。何故こうしたか。アルミのふちがあると画面に没頭できなかったからです。iTunesやYouTubeの登場以降、PCのディスプレイは仕事の書類を確認する道具から一転、テレビと同様の映像を楽しむための道具に変わりました。最近では全画面再生で映像を見ることも多いでしょう。映像を鑑賞するのにふさわしいデザイン、それが銀縁のない画面です。

さらに従来黒いプラチックで覆われていた背面は廃止され、Cinema Display同様ボディ全体が一体のアルミニウムに。これも理由は明快です。パーツが増えれば増えるほどシンプルから遠ざかっていく。さらに背面まで金属になったことで放熱性能も上がります。放熱が早い→ファンが回りにくい→うるさくなりにくい→音の鑑賞の邪魔にならない、こんな効果もきたすることができます。もちろん薄く美しいことも重要ですよね。
10年後のiMacはテレビだった
当初「インターネットにすぐつながるマシン」として開発されたiMacも、全部入りの一体型Macというコンセプトを守りながら、デザインを洗練しつつ10年という長い年月の中でゆっくりと形を変えてきました。ではインターネットも普及した今、現在のiMacとは一体何を目指しているのか?
誤解を恐れずに言うなれば───この新iMacこそがAppleが作った究極の「テレビ」です。最大27inchの鮮やかなLEDバックライト液晶、液晶テレビと同じ16対9アスペクト比、部屋のどこからでもはっきり見える178°の視野角、低音域が向上しひずみが少なくなった新しいスピーカー…まさにテレビとしても十分に希求できる性能です。そして最も大切なこと、それはこのテレビがMacだということです。MacOS Xができるすべてのことを実現できるテレビ。メディアの鑑賞に能うPC。そしてモノを作ることができるテレビ。これを究極のテレビと言わずしてなんと言いましょう?
これで更にパフォーマンスがいいから困る
もちろんPCである以上性能にも触れなければいけません。まずはディスプレイから。今回から21.5inchと27inchが選べるようになり、21.5inchでは1,920×1,080px、27inchに至っては30inch液晶に匹敵する2,560×1,440pxの表示が可能に!! はっきり言って21.5inchでも解像度は十分ですが、グラフィック・映像・音楽制作等のクリエイティブ用途にiMacを購入しようとしている人には27inchを薦めたいところ。ちなみに27inchモデルのみ、iMacを外部ディスプレイとして利用することができます。既にMacBookを持っている人は非常に便利なはず。
あとここのところあまり大きくアップグレードされなかったCPUですが、遂にIntel最新のCore i5やCore i7を選択することが可能に。実はiMacに一番これを期待していた人は多いのでは。Core i7に至っては従来の2.4倍のスピードが出るとも言ってるのでかなり期待が持てます。
そして価格がえらく安い!! 21.5inchの一番下のモデルで118,800円。これで十分という人も多いでしょう。ちなみに最上位機種27inchにCore i7と8GBメモリを積んでも239,120円!! 抜群のコストパフォーマンスですね(個人的にはこの組み合わせが凄く欲しい…!!)。いつも同じようなことを言ってるようですけど、これ、買いだと思いますよ。

「Magic Mouse」は歳をとらないマウス
そして忘れてはいけないことがもう一つ。今回のiMacのアップデートに合わせてAppleの標準マウスが新しくなりました。Magic Mouseです。
従来のMighty Mouseもそれは素晴らしいマウスだったと思います。左右クリックの標準化、そして全方向にスクロールできる画期的なスクロールボールの採用。実に画期的なマウスでした。しかし月日とは残酷なものです。このスクロールボールには使っているうちにゴミがたまって、次第に正常に動作しなくなるという致命的欠陥がありました。まさに「歳をとるマウス」。
しかし時間が奪うものもあれば、時間が与えるものもありました。Mighty Mouseが発売されてから4年の間、Appleは革命的にな技術を発明しました。「マルチタッチ技術」です。使う指の本数や指の動きを正確に把握し、いとも簡単に複雑な操作を可能とする技術。iPhoneやMacBookのトラックパッドにも採用されている技術です。そう、マウスの代用品であったトラックパッドはいつしか本家のマウスをも凌駕する性能を得ていました。であればもはやマウスは用済み、すべてトラックパッドにすればいい、というのが私の意見でしたが、Appleの考えは少し違いました。「マウスとトラックパッドを一つのものにすればいい」。
Magic Mouseにはカーソルを操作するための物理的なボタンが一切ありません(訂正:Mighty Mouseと同様マウス全体を押し下げる形のボタンになっています)。クリックやスクロールはマルチタッチ対応トラックパッドと同様、すべてマウスを触ることで操作します。まさにマウスとトラックパッドの間の子。カーソルの移動はマウスとして正確に、クリック操作はトラックパッドとして自由自在に。そして当然物理的なボールがないため汚れがたまって動かなくなることもないでしょう。掃除も簡単。Appleの技術の積み重ねが「歳をとらないマウス」を生み出しました。なるほど、確かに "魔法" ですね。
ちなみにMagic MouseはBluetooth接続。iMacに標準でついてくるキーボードもBluetooth接続です。確かに電池を気にかける必要も出てきますが、実際にBluetooth製品を使うとこうも楽なものかと皆さん驚くと思いますよ。無駄な接続線もすっきり。Appleはユーザーの机の上もきれいにしていくつもりのようです。
長い時間をかけた考察がなければ、真にシンプルな製品は生まれない
どんなに新しいiMacが素晴らしくても、Magic Mouseの使い心地がどんなに優れていても、自分の思い出の中の初代iMacを超えることはないでしょう。きっと時間が思い出の尖った部分を丸めていくからでしょうか。そう、時間が経てば思い出は勝手にきれいになってくれますが、今現実にあるものは人の手で磨かなければきれいにはなりません。新しいiMacも、Magic Mouseも時間をかけて丁寧に磨かれた製品です。時間をかけて無駄な部分を削っていった結果、ここまでシンプルな製品が出来上がりました。Appleの作る「シンプル」は一朝一夕にできるものではありません。そしてその長い年月に及ぶ熟慮こそが、他の誰もが作れない製品をAppleが作れる理由なのです。