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高度に発達したAppleの文化は「宗教」と見分けがつかない

2009.06.16 Text

その熱狂はどこから生まれてくるのか

WWDCの話題も一段落したので書こうと思いながらそのままにしておいた題材を。ちょっとスレスレの所を通りますがちゃんとしたところに着地しますので安心してお読みください。

Appleはよく宗教に例えられます。Appleの製品をよく買ったり、Appleの情報に詳しい人のことをよく「Apple信者」なんて揶揄したりしますが、数あるパソコンメーカーの中でも消費者が「信者」呼ばわりされるのはAppleくらいのものじゃないでしょうか。今は熱狂的な信者だという人も、元を辿れば普通の1消費者だったはずです。その普通の「消費者」が「信者」に変わる理由とは一体なんでしょうか。

「奇跡」が消費者を信者に変える

本物の宗教でも、ただ人に教義(聖書の内容とかetc)を伝えるだけじゃなかなか信者にはなってもらえないでしょう。「隣人を憎み敵を愛せ?ふーん、なんかうまいこと言うね」多くの人の反応なんてこんなもんです。そんな「浅い」人たちを信じさせるためによく使われるのが「奇跡」です。例えばキリスト教の世界では、イエスが復活したり、水の上を素足で歩いたり、マリア像から血の涙が流れたり…こういった奇跡が数多く伝えられています。確かに水の上を裸足で歩く人を目の当たりにしたら、驚きのあまりその人のことをとてつもない存在として信じてしまうかもしれません。偶然ないし必然的に発生した「奇跡」を直に観測したり、伝聞したりすると人は信じやすくなる、そういう性質があるようです。

Appleの場合も多くの場合始めから「信じられていた」わけではないでしょう。「親がMacを使ってたからなんとなくMacを使ってる」「学校の指定でMacを使うことになった」「なんか流行ってるし安かったからiPodを買った」…多くの消費者はAppleとの関係が浅い状態から始まります。消費者との関係が深まっていく過程にやはり「奇跡」があります。

パソコンを知らない人間にまで向かい入れられた初代iMac

Appleといえば言わずとしれたデザインの名手。初代iMacは当時のパソコンとしては「あり得ないデザイン」が採用されていました。カラフルで半透明。ころんと丸みを帯びたボディ。無機質なベージュの箱でしかなかったパソコンの世界に全く新しい風が吹いた瞬間。Appleどころかパソコンすらよく知らない人たちにも大きな衝撃を与えるプロダクトでした。

iPodは新しいAppleの歴史の始まり

iMacは狙って出した奇跡ですが、偶然が生み出したこんな奇跡もあります。iPodが発売されて間もない頃、あたらし物好きのiPodユーザーの間ではこんな会話がなされていました。「iPodをランダム再生すると、たまに狙ったように絶妙の選曲をしてくることがある。もしかしたら私の気持ちをiPodが読み取ってるんじゃないか!?」。私も「おおーこう来たか!!」という選曲をiPodがしてくれた経験が何度もあります。しかし如何にiPodが優れた機械でもさすがに人の気持ちまで読み取ることは出来ません。確かにこの頃のiPodにも再生回数が多い曲を優先して選曲する、という小細工が仕込まれていた可能性もありますが、それでもこのような「ナイスDJ」現象は偶然の産物と言っていいでしょう。そもそもiPodが「手持ちの全ての音楽ライブラリを収納できる能力」を持っていたからこそ偶然生まれた現象なのです。やはりAppleのイノベーションが生み出した奇跡だと言えます。

このように狙って出せる奇跡もあれば、偶然が生み出した奇跡もあります。なんにせよAppleがデザイン的にも、ハードウェア的にも、ソフトウェア的にも、文化的にも先端を進んでいなければiMacもiPodもiPhoneも生まれませんでした。奇跡を起こしたければ手を止めてはいけません。Appleが走りながら生んできた奇跡の数々が、世界中の消費者を熱狂的なまでに信じさせ続けているのです。

ジョブズが仮に辞めたとしても、「伝道師たち」の力でAppleは生き残る

ではAppleの奇跡の原動力はなんでしょうか。美しいプロダクトデザイン、優れたハードウェア設計、先端をいくソフトウェア。これらの要素でAppleのプロダクトは完成します。が、プロダクトがあるだけでは話になりません。そのプロダクトのよさは一般消費者に伝わって初めて意味を成すものです。最後の「伝える」というステップを担っていたのがApple創業者スティーブ・ジョブズです。これまで数々のプロダクトを世界に売り出してきた彼は、プレゼンテーションの教科書的な存在と言えます。どんな楽しいストーリーでも語り手によっては至極つまらないものになることもあるでしょう。Appleを宗教に見立てるならば、彼は教義を広める語り部です。Appleの奇跡を作り、奇跡を広めた彼の功績は計り知れません。それ故に近年の体調不良による引退説が噂された際にも、彼の引退がAppleの株価にマイナスの影響を与えるのではないか、最悪の場合Appleは沈んでしまうのではないか、そんな空気が流れました。確かにジョブズは最重要人物ですが、仮に彼がAppleの仕事を辞めたとしても、長期的に見て大きなマイナスにはならないのではないか。私はそう感じています。

最近では「エヴァンジェリスト」という言葉があるそうです。日本語で言うところの「伝道師」であります。ジョブズは一人ですが、ジョブズの話を聞き、ジョブズの発想を知り、ジョブズの精神を理解した人間は世界中にいます。さらに「信者」の中でもAppleから得た情報や思想を発信し、伝導する人間は多く存在します。一文の得にもならないのに、これだけ長い文章を書いてAppleの話をしている私も僭越ながら「エヴァンジェリスト」と言えるでしょう。Appleが持っている最強の武器、それは長い時間をかけ信頼関係を築き、その末獲得した「伝道師たち」ではないでしょうか。Appleの最大の理解者であり、協力なセールスマンにもなる存在を、世界中に持っているのです。もはや「影の社員」といっても差し支えないでしょう。数あるブランドの中でもこれほど強固なエヴァンジェリストのネットワークを持った会社はAppleくらいのものでしょう。

ジョブズの影が薄い現在でも、Appleは順調に操業しているようです。ですが、やはり本物の「伝道師」にはいつまでもがんばってもらいたいと思ってしまいます。もうすぐジョブズが復帰することになっていますが、楽しみであると同時に無理はしてほしくないと思っています。世界中の弟子たちは既に一生懸命に働いていますからね。

Comment [4]
向かいの席のたけし [2009.06.16 08:06]

アキラフクオカ先生のiPhone3GSレビューに期待しています。

みたに [2009.06.16 10:14]

「エヴァンジェリスト」は、Appleの時代(Mac以前)からいたんではないでしょうか。
少なくとも、私がMacと出会ったPlusの時にはいましたよ

AKIRAFUKUOKA [2009.06.16 10:50]

>たけし
それはまた別のお話…

>みたにさん
もう既にその時期にはいたんですね。
ネット時代になって今まで見えなかったエヴァンジェリストたちが
さらに多く見えるようになったのかもしれませんね。

scott [2009.06.16 21:30]

ぼくとアップルの初代コンピューターの生まれた日がおなじ19840124だというのを
去年ようやく知って、一生appleでいこうと心に誓いました。





 
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