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PLUTO 7巻 - 浦沢直樹は手塚治虫よりもすこし、優しい。

2009.02.22 Book

PLUTO 7巻 - 浦沢直樹は手塚治虫よりもすこし、優しい。

Amazon.co.jp: PLUTO 豪華版 7 (ビッグコミックススペシャル): 浦沢 直樹

最強のロボットであるはずのエプシロンがプルートゥに敗北する第7巻。

原作である手塚治虫の鉄腕アトム「地上最大のロボット」は紛うことなき傑作であり、多くのファン(浦沢氏含む)がその内容を知ってる。大きなストーリーの変更は間違いなくアウト。しかしただ忠実を作ろうとしても、間違いなくそれを下回るものができるだけだ。そこで浦沢氏は得意のミステリー調で物語を動かすことにした。主役はアトムではなく、ロボット刑事ゲジヒト。刑事の視点から、世界を代表する7体のロボットが次々に破壊されていく謎の事件を追う。事件の過程の中で原作ではほとんどスポットが当たらなかった7体のロボット達のストーリーを丁寧に織り込みつつ、事件の謎を解き明かしながらストーリーが進む。これぞまさに浦沢氏得意の戦法であり、オリジナルにはないロボットと人との物語が見事に構築されていった。

しかし単行本第6巻でゲジヒトが死んでしまう。もちろんこれも原作通りではあるが、物語を牽引する浦沢氏の武器が封印されてしまう。ここからは原作と、生身で対峙しなければならない。折しも第7巻は原作では最大の見せ場の一つである光子ロボット・エプシロンとプルートゥの戦いが描かれる。本来エプシロンはプルートゥが及ばないほど強いロボットである。だが最終的には小さなほころびからエプシロンは敗北してしまう。原作を読んだ人はもちろん知っているし、読んでいない人も予想はつくだろうが、エプシロンは死ぬ。いかにして死を迎えることになるのか、それを描くのが第7巻の大きなミッションである。

しかし本当に細かい描写がうまい。孤児院の子どもたちが開いたエプシロンのサプライズ誕生日パーティーは、エプシロンが「知らなかったフリ」をしつつも、子どもたちとの別れを惜しむシーン。エプシロンの細かい仕草や敢えて大きく付けた表情が見事。ところどころにエプシロンの死を予感させるシーンを混ぜつつ、物語はエプシロン最期の瞬間を迎える。子どもを守ろうとした瞬間、生まれた隙をプルートゥは見逃さなかった。原作でも有名な「エプシロンの手」はPLUTOの中でも意外な形で使われる。手塚治虫が描いたエプシロンの最期は残酷な悲劇だった。しかし浦沢氏が描くそれは少し違うように見える。忠実な悲劇ではあるが、何かまだそこに温かさがあるような。浦沢氏が手塚治虫ほど残酷になれないところに、また別の魅力が生まれているのかもしれない。


つかね、長々文章書いてますけどね、読んでて泣けてきてぜんぜんページが進まなかったよ。


そして次の第8巻でPLUTOは完結。遂に真打ち、アトムとプルートゥの決戦。浦沢マンガ名物の伏線は果たして本当に回収されるのか?w そして、絶対に越えられない壁である原作にPLUTOはどこまで食いついていけるのか。原作では消費されて「強さの競争の無意味さ」を示すことが存在意義であったボラー、しかしPLUTOでは正体がまだハッキリしない。これが浦沢氏の最後の切り札になるのか…。とにかく6月の発売を楽しみに待ちましょう。

表札を愛しすぎた男

2009.02.18 Text

昨日のニュースの中で特に目を引いたものがあったので簡単にピックアップ。

自宅から表札290枚=窃盗容疑で無職男逮捕−「珍しい名前が好き」・警視庁(時事通信) - Yahoo!ニュース

一般家庭の表札を約290枚も盗んだ男が逮捕された。犯人曰く「珍しい名前で、楷書(かいしょ)体で書かれた表札が好きだった。電話帳で探し、住所を調べて盗んだ」というわけで、このような凶行に及んだとのこと。いや、もちろんやっちゃいけないことなんだけど、なんかわかるというか。デザイン系の業種にもタイポグラフィマニアはたくさんいますが、一般の方でそういった趣味の人は珍しいんじゃないでしょうか。それにしてもなんだか盗みの理由がかわいらしく感じてしまうのが不思議です。でも盗みは盗み。この人のタイポグラフィへの愛情(かなり限定的だけど)が人としての道を踏み外させてしまったのかと思うと無念でなりませんね。

法則「流れ行く風景に人は郷愁を感じる」

2009.02.13 Web

AESTHETIC ECHO.COM

AESTHETIC ECHO.COM

trick7さんのエントリーでAESTHETIC ECHO.COMが紹介されていまして、それに乗っからせていただいてエントリーしちゃおうかなと。AESTHETIC ECHO.COMは流れ行く景色が自動生成されていくコンテンツ。

AESTHETIC ECHO .COM BY RAFAEL ROZENDAAL

現実離れした配色と、極限にミニマルな世界が、ただ、流れていくだけ。本当になんてことはないし、別段美しい景色が流れている、というわけでもない。だけど何か心に「引っかかるもの」を感じるんですよね。きゅーっと胸の奥が縮こまるような。これは懐かしさ、というか郷愁なのか何なのか。

これはきっとこの映像を脳が「知らない場所を走る電車から見た風景」のように感じているからなんじゃないでしょうか。子どもにとって一人で乗る知らない電車は期待と不安が入り交じった極めて特殊な乗り物です。そもそも電車は自分の思い通りに動いてくれる乗り物ではありません。知らないおじさんが制服を着て運転している乗り物です。レールに沿って一方方向に走るだけ。この時点で自由が奪われている、不安です。さらに「切符」や「乗り換え」といったむつかしいシステムはさらに不安を高めます。本当に目的に付けるのか、自分の選択は間違っていないか、お金が足りなくなったりしないか…。でも目的地では友達や、親戚、家族が待っています。きっと訪れるであろう楽しい思い出の時間を目指して、少年少女は電車の外の景色を、じっと眺め続けるのであります。成長した後も、受験や上京といった場面で必ず「電車の窓からの景色」は登場するでしょう。そのときの思いが、こういった映像を頼りに思い出されているのかもしれません。

Groovisions× Cornelius「Wataridori」

個人的に「横スクロール型映像」と言えばGroovisions× Corneliusの「Wataridori」をまず思い浮かべます。

2004年の作品ですから下手すれば古典になりつつあるのかもしれませんが、アイコン的な映像の美しさと渡り鳥を主人公にしたゆったりとしたドラマがとても印象的でした。厳しい冬の大地を抜け、山を越え、海を渡り、都会までたどり着く渡り鳥達。音楽とのシンクも、さすが。

Sound × Vision 200

Sound × Vision 2004というイベントのために制作された映像で、このDVDに収録されています。

JAPAN CAR

もう一つ、ロンドンのサイエンスミュージアムで行われているJAPAN CARというイベントのために、映像制作会社のWOWさんが制作した映像。

こちらは電車ではなく車に関する風景ですが、真っ白いもやのなかから、木々、そしてライトが浮かび上がってきて、次第に自分たちの走っている風景が見えてきます。自然物が逢えてデジタルな雰囲気で表現されるのが映像的で面白いですね。私が一番ツボなのは途中パパパっと地面が鏡のような面で覆われるシーン。水田なんですよね。同じ景色でも切り取りかたでこうも面白くなるのかと。「減反した未来の農家は水田の代わりにソーラーパネルを設置している」みたいな勝手な未来設定を想像して一人盛り上がりしてしまいました。ミラノサローネで発表されたLights and Shadowsと対になっていて、こちらの映像も幻想的で美しいですね。

肉眼では見えない超スロー撮影を手のひらサイズで。「CASIO EX-FC100」

2009.02.10 Gadget

目にも見えない超スロー撮影を手のひらサイズで。「CASIO EX-FC100」

カメラに求めるものとは何か。多くの人にとっては「きれいに撮れること」でしょう。「きれいな人はより美しく、そうでない人はそれなりに写ります」というのは往年のフジカラーの名文句ですが、本当にそれだけでいいんでしょうか。一眼レフデジカメはもちろんコンパクトデジカメ、それどころか携帯電話におまけのように付いているカメラですら十分にきれいに撮れる時代です。美しさだけではもう大きな差がなくなってきたぞ…ということでCASIOは「美しさ」よりも「早さ」で勝負しました。初代ハイスピードEXILIM EX-F1の機能を薄型ボディに収めたEX-FC100です。1秒間に30連写、最速で1000fps(つまり33分の1のスピード!!)という超スロー動画撮影が可能。細かな性能ではさすがに大型のEX-F1には負けますが、圧倒的にコンパクトなのでこれなら気軽に持ち出せますね。

上の動画はEX-F1で撮影された画像ですがこりゃ普通のデジカメじゃ撮れませんんわな。どんな風景でもこのカメラで撮影すればたちまちマトリックスの世界。本来なら特殊な機材でしか撮影することのできない世界がこのカメラなら簡単に撮影することができる。でもこのカメラはただ速いだけで終わらない。この「とにかく早く撮影する能力」を生かして「美しい写真を作り出す」機能が付いている。一瞬で撮影されたたくさんの画像を合成することによってぶれのないきれいな画像を作り出す。「そんなソフト上で合成された写真なんて邪道だッ!!」なんていう人もいるかもしれませんが、そんな堅いことは言わず。これからの写真技術は特にソフトウェアの技術による進歩が大きくなっていくでしょう。もう既におなじみの「顔検出機能」もその一部ですね。

しかし相変わらずCASIOのデジカメは目立たないようでいて実に尖ってますね。もう数年前になりますがCASIOのデジカメで撮った写真を背面液晶で見せてもらったときには本当に驚きました。いや、写真がきれいだったとかそう言うことじゃなく、単純に写真を次々に切り替える動作が速いこと!! あまりのスムーズさに驚いてしまいました。確かに人に見せるときに動作がモタっていたら恰好がつかないですもんね。CASIOは当時から他のメーカー以上に写真再生に力を入れていました。特にこの頃から撮影した写真をデジカメに入れっぱなしにしてアルバム代わりにする人が増えていたようです。最近ではSONYがアルバムとして使えるデジカメを作っています。まさに先見の明。

今まで写真は人間の記憶の代わりに過ぎ行く時間を記録する役目を果たしてきました。フィルムがデジタルになり、さらに扱いやすく、美しく、鮮やかに記録できるようになって。これまで人の目に見えるものだけを残してきましたが、デジタルの力は人の目にも見えなかった世界すらも残すことを可能にしました。写真と映像の世界、まだまだ楽しい世界が広がります。

参考URL:
SCR | DROPCLOCK

Kindle2を見てると大きなiPod touchが欲しくなる

2009.02.09 Gadget

Amazon「Kindle」

アメリカのAmazonが販売している電子ブックリーダー「Kindle」が装いを新しくver.2になる模様。

Amazonの電子ブックリーダー Kindle 2 リーク、薄くなって値段据え置き - Engadget Japanese

日本では初代Kindleも発売されていないため馴染みがありませんが、KindleはアメリカのAmazonが「電子ブック界のiPod」を目指して作った意欲作。Kindle上からネットに接続して電子ブックを購入したり、モノクロだけどWebブラウズができたりとなかなか高性能な一品です。基本的には「本を読むためだけの道具」ですが、初代iPodと同じくらい売れているらしく売り上げはなかなか好調な模様(もちろん"初代iPod"ですから世界的大ヒットの以前、ということですが…)。

Amazon「Kindle」

初代Kindleはデザインもなかなか奇抜で、右端が傾斜しているのが特徴。おそらく本物の本でいうところ「小口」の部分をイメージしたんだと思いますが、個人的にはけっこう好きなデザインでした。で、今回のKindle2はと言うとかなり保守的なデザイン、というかApple的というか…ぐっとかわいらしくなった印象。中にはKindle2の厚さを鉛筆と比較したりともろAppleから頂いたような演出もありますが、なまじ出来がいいだけに感触は悪くない、むしろいい感じ。

ここまでApple、というかiPod touch/iPhoneライクなデザインになってくると「じゃあこんな感じの機械をAppleが作ったらどうなるのよ?」と妄想してみたくもなります。Kindleがいくら高性能だといっても「モノクロ表示の電子ブックリーダー」以上のものではありません。それにiPhoneで電子ブックが読めるソフトが出てきてもおかしくありません。機能的にiPod touch/iPhoneで、なおかつKindleくらい大きなマルチタッチカラー液晶、そして(私は特に必要性を感じませんが)物理キーボードが付いたデバイス…。そんな「ちょっと大きめのiPod touch」があったら最高なんですが…。

大きなiPod touch…?

こんなデバイスがあったらそれこそNetBookいらずですね。しかし自分で合成しておきながら何ですが、iPhoneの画面をはめ込むと急にデザインが野暮ったく見えてきてしまうから不思議。ぜひ早急に「本物」をつくって頂きたいところです。

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  • AKIRAFUKUOKA(福岡 陽)
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