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個人認証の覇権をめぐって - Google, Facebook, MySpaceは「G.W.」を目指すか

2008.12.07 Web

個人情報が変える世界 - Google, Facebook, MySpaceは「G.W.」を目指すか

ずっと部屋でコード書いてばっかりもよくないから結局ブログ書いちゃうね。今日の話はMETAL GEAR SOLID2の超ネタばらしが含まれてるのでばらされたくない人は読まないように。

「小さな干渉」を繰り返せば人を操ることができるのではないか

METAL GEAR SOLID2には「G.W.」と呼ばれる超ウルトラスーパーコンピュータが登場する。G.W.はアメリカを影で牛耳る謎の組織「愛国者達」が作った代物で、このコンピュータを使って彼らはアメリカを真の支配下に置こうとした。G.W.とは簡単にいえば「全世界の人を思い通りに、自由自在に操作することができる機械」である。人を思い通りに動かす手段、と言われたら何を思い浮かべるだろうか。催眠術に、マインドコントロール、はたまた超能力か…。どれも馬鹿げていて現実的ではない。もっと確実に人を操る方法がある。

例えば、あなたと私が見知らぬ者同士同じ机で勉強していたとする。私が何かの弾みで消しゴムを落としてしまう。消しゴムはあなたの足下へ転がっていった。私はあなたに「ごめん、消しゴムとってもらえますか?」と言う。そしてあなたは足下の消しゴムを拾って私に手渡ししてくれるだろう。

はい、これで私はあなたを思い通りに操って「消しゴムを拾わせて私に手渡してもらう」という行為をさせました。

…って、これだけ書いたらばかにされたような気持ちになるでしょうね。たかが消しゴムかよ!!と。でもこんな小さなことでも繰り返せば大きな目的を達成できる。ある人物に「焼き肉20%OFF」のチケットを渡す。せっかくだからといろんな友達を誘う。中には顔も知らない男女が二人。焼き肉屋で二人が好きな音楽をかける。音楽の話で盛り上がり、それを機に二人は恋人になる…そういった「小さな干渉」をうまく繰り返せば二人は結婚し、子どもが生まれ…割引券からスタートしてなんと新たな命が生まれた。こんな風に人を操作することが可能なのではないか。それがG.W.の考え方である。G.W.はどういう干渉の方法ならその人を動かすことができるかを計算し、その人を思い通りに動かす。G.W.から「小さな干渉」を受けた人間がさらに他の人へ「小さな干渉」をし…最終的に全人類はG.W.の想定した結果に収まるように「動かされ」てしまう。

ゲーム中では主人公が、どう考えても勝ち目のない、化け物としか思えない超戦士と戦わせられる。しかしG.W.の「操作」によって主人公は結果的に操られ、経験を積み、強くなり、勝利を収める。本人は自分の意志で動いているように感じているが実際に促したのはG.W.だ。G.W.は不可能とされることを見事に実現させ、その信頼性を証明するのである。あとはその適応範囲をアメリカ全土に広げればいい。


G.W.自身が煙に撒こうとする台詞が多いため気がつきにくいが、2:04から2:36までの間核心に触れる台詞が出てくる。


操作できる確率を上げる鍵は「個人情報」にあり

しかしそんなうまくいくのか?と言われれば普通に考えて極めて難しいことだろう。だが確実にその確率を上げることはできる。キーは個人情報だ。先ほどの男女の場合、好みの音楽はもちろん、二人の性格、言葉遣い、癖、考え方、趣味、さらには交友関係、服のセンス、好きな芸能人…そういった情報が多ければ多いほどG.W.は二人をうまく操作することができるだろう。

G.W.はネットを通して個人の情報を常に回収している。官公庁や巨大企業の情報も収集してるであろうし、ターゲット自ら情報を送信するよう仕向けることだってできる。そうしてG.W.はさらに「操作」の精度を高めてゆく。これこそ究極の支配。誰も何も悪いことはしていない。干渉した人も、された人も、自分がまさか一つのコンピュータに操作されているとは思わない。G.W.にかかれば疑う余地すら作らせないだろう。

ネット上で個人認証の覇権を握るのは誰か

もちろんG.W.はフィクションの産物である。人を完全に操る、ということは不可能に近い。人の心を完全に解き明かすことは難しいだろう。ただ人を誘導することは不可能ではない。そこで個人情報だ。アメリカではGoogleもFacebookもMySpaceも、個人情報の取得、そして囲い込みに躍起になっている。ちょうどIDEA*IDEAさんのところで「AmazonでFacebook Connectが使われたらどうなるか?」という話が紹介されている。

「AmazonでFacebook Connectが使われたらどうなるか?」のモックアップ画面がすごい件 | IDEA*IDEA

AmazonがFrendListをチェックして、「こいつ影響力あるな…ゴクリ」と思ったら、「ちょっとこの新商品、試しに使ってみない?」と声をかける。友達が買ったものや評価した商品を表示したり、Facebookアカウントから読み取れる嗜好を反映した商品リストを表示したり。AmazonはFacebookが持つ個人情報を使い商品を買ってもらう確率を上げる。今まで以上にさらに効果の高いプロモーションが打てる。それでも、個人情報の持つ力はまだまだ発揮されていないだろう。ある意味究極の個人情報活用がG.W.とも言えるわけだが。

はてさて、G.W.の上流部分でもある個人認証の世界で勝利するのはGoogleか、Facebookか、MySpaceなのか。まだまだ熱いバトルが続きそう。ちなみにMGS2の発売は2001年。だからストーリーが固まったのは2000年あたりであろう。8年前からこんな話を考えていた小島監督は本当にヤバい。今こそこのストーリーを実感できる時代だと思う。監督の先見性をまざまざと思い知らされる次第。ゲーム監督以外の職業でもぜんぜん大丈夫じゃないですかね…?


(補足トリビア:G.W.はマシンの名称であり、人々をコントロールする計画自体はS3と呼ばれていた。劇中ではG.W.が破壊されたため、途中で同様のマシン、JFKに役割をバトンタッチする。ここらへん監督はGoogleをイメージしていた?他にも2000年問題の修正パッチの中にマルウェアが含まれていて、G.W.に情報を送り続けていた、とか時代を感じさせる設定も。)

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