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ロボットの感情が人間に限りなく近づくとき。「PLUTO 6巻」

2008.07.29

ロボットの感情が人間に限りなく近づくとき。「PLUTO 6巻」

Amazon.co.jp: PLUTO 6―鉄腕アトム「地上最大のロボット」より (6)

表紙は何故かお茶の水博士。奥に光る2つの眼はプルートゥか。
一応以降の文章はネタバレ注意。

待ちに待ったPLUTO 6巻。今まで物語を牽引してきたゲジヒトの最後を綴る。遂に明らかになるプルートゥの正体、そして事件を操ってきたアブラー博士が遂に本性を見せる。一枚の画像からプルートゥの居場所を突き止め、遂に追いつめることに成功するゲジヒト。しかしロボットとの無意味な戦いに疲弊した彼はとどめを刺さず、自ら辞職を申し立てる。ゲジヒトの戦いは終わった。しかし、プルートゥの復讐は終わらない。7体のロボットを全て倒すまでは。プルートゥがゲジヒトに仕掛ける最後の戦いとは…?

ちなみにこの巻の前の話を忘れている人はぜひ5巻を読み直したほうがいいです。覚えているつもりでも必ず読んでおくべき。5巻の冒頭から6巻の最後までは人つながりの話だと思ったほうが良さそう。

原作を知っている人はわかると思うんだけど、原作では「プルートゥがアトム以外の6体のロボットを倒す」ことになっている。もちろんこれに準拠するのが最低限のルールだろう。なのに6巻の結末は一見プルートゥが直接ゲジヒトを倒していないように見える(私も最初あれ、おかしいなと思った)。が、ティディベアの告げ口、一度はゲジヒトに効かなかった”攻撃”、おじいさんが見た運河…という各コマの描写を見ているとちゃんとプルートゥが手をくだしたことになる。最強のロボットはやはり腕力だけでは決まらないということかね。

プルートゥにも勝る能力を持ったゲジヒトを敗北に追い込んだのは、記憶。それも子どもの記憶。ゲジヒトはプルートゥに向かって「おまえの父さんはお前を愛してなんかいない」と寂しげにつぶやく。しかしこの台詞が当てはまるのはプルートゥだけじゃない。アトムもまた父親に愛されなかったロボット。アブラー博士とプルートゥ、天馬博士とアトムの対比が「MONSTER」となったアトム復活以降の軸になっていくのか。

そして6巻には次巻への伏線ともいえるエプシロンのシーンが。アブラー博士に「天候が悪い日は力が出せない」ことを指摘されるエプシロン。おそらく次巻ではエプシロンとプルートゥとの対決、エプシロンの敗北が描かれることでしょう。原作「地上最大のロボット」では最大の盛り上がりを見せるエプシロンとプルートゥの話。最も手塚治虫らしいく表現されたロボットの心の葛藤を、浦沢氏によっていかに再現されるか…期待と不安でいっぱいです。

ちなみにエプシロンの話を知らない人はぜひ笑芸人 Vol.16を買ってみてはいかがでしょう。付録CDに収録されている立川談志による朗読「鉄腕アトム」。「地上最大のロボット」のプルートゥとアトムの出会いのシーン、そしてプルートゥとエプシロンの対決のシーンが朗読されています。手塚治虫を天才とあがめる立川談志の渾身の朗読。落語に興味がない人でもぜひ聴いてほしいところ。

もしくは素直に原作が収録されている鉄腕アトム (13)を読むか。先に断っておきますが原作を読んでもPLUTOがつまらなくなることはありませんので。

とりあえずゲジヒトの奥さんが「泣く」ところを読んだときもうぽろぽろ泣いてしまった。ロボットと感情。ロボットは感情を持たないはず、だけど人間のまねごとがいつか、本物の感情に限りなく近づくのだろう。シンプルな骨格にロボットの悲哀を乗せ、エンターテイメントにまとめあげた手塚治虫のアトムに、PLUTOは近づくのか、はたまた越えるのか。

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