アニメクリエーターがNHKのCMを作ったら…「アニクリ15」

時期外れもいいところなのですがちょっと思うところがあったのでご紹介。
NHK アニクリ15 -アニメーション・クリエーター15人とNHKのコラボレーション-
ちょうどNHKが不祥事などでしょんぼりしていた時期。なんとか盛り上げようということで著名なアニメクリエーター15名に1分間の短編アニメの制作を依頼。かの押井守監督も含む豪華なスタッフ。各映像は3シーズンにわけられ、放送枠もランダム。いわばNHKのCMのようなかたちで放映された。キャッチフレーズの「もっと見たい、NHK」。一貫したテーマは特に決まっておらず、初期の作品はとりあえずクリエーターが好きな物を実験的に作ってみたよ!! という雰囲気が強かったのだけど、NHK的にそれじゃまずいということになったのか、最終第3シーズンではNHKをテーマに据えた作品が増え、目指す方向もはっきりした。その第3シーズンから3本をピックアップ。
・「プロジェクト・オメガ」 監督:河森正治
NHKの放映中に臨時ニュースが!! なんと巨大な飛行物体が日本の東京・渋谷、つかNHKのビルに向かって落ちてくる!? 慌てふためくアナウンサー、そして中の人たち!! 渋谷を守るためどーも君指令は「プロジェクト・オメガ」を発動!! 日本中からのエネルギー電波を受けNHKが巨大ロボットに変身!! 遂に謎の落下物体を受け止めた!! …と思いきやエネルギー電波が弱りロボットが物体に押されている!! 「もっと"力"をー!!」の叫びが…このあとどうなるんだー!?!?…で最後に「もっと見たい、NHK。」と。
最初はベタベタに見えて予想外の展開に発展、で気にさせたところでキャッチフレーズの「もっと見たい」と出してくるのはうまい。しかもエネルギー電波とか「もっと"力"をー!!」っていうのは、やっぱりもしかして受信料のことを言っているのか!? つい勘ぐってしまう。まさにNHKだからこそできるネタ。面白い。
・「おんみつ☆姫」 監督:前田真宏
タイトルがすべてを物語っているハチャメチャアニメ。玉姫を狙う刺客が表れた、と思ったら空飛ぶ黒船来襲。姫とお供のからくりロボットが悪に立ち向かう!! ついていけないくらいのカットの速さがパラパラマンガ的な楽しさを演出。
歴史モノと言えばNHKの18番。巨匠・伊福部昭氏の壮大な音楽が無駄に豪華なNHK感をさらに加速。最後に「その時歴史が動いた」で締めるのもらしくていい。ちなみにナレーションは松平アナだったりする?
・「オハヨウ」 監督:今敏
朝。一人暮らしの女性の雑然とした部屋。彼女はまだ眠気が覚めないのか、"もう一人の彼女"をベットに置いたまま冷蔵庫で牛乳を一気。テレビを付けながらボケッと歯を磨いていると"もう一人の彼女"がようやく起きたのか、先ほどの彼女と同じ行動をたどる。シャワーを浴び鏡の前に立ったところで彼女の眠気がようやく覚める。鏡に向かって「おはよう」。
監督は当ブログで何度となく紹介している今敏監督。眠気を分裂で表現するのは今さんらしい演出。普通に考えればNHKのニュースを見ているシーンで目が覚めた方が効果的なのでは?とも思うところだけど、そこをグッとこらえてテレビのカットは慌ただしい朝の1シーンに停めている。確かにそれの方が押し付けがましくなく、嫌みもない。あくまで「生活の一部」として表現しているところにリアリティがあっていいと思う。
なんで15本の中でこの3つを選んだかというと、ちゃんとこの企画の前提条件を考えて作っているなと思えたのがこの3本だったから。おそらくNHKの人には好きに作っていいと言われたのかもしれないけど、基本はNHKの番組であり、NHKの宣伝として扱われる。NHKの立場を向上させるための企画である。クライアントの好意に甘えず、しっかり守るべき部分を守る。だからこそこの3本は面白く見えた。自由なクリエイティブができるとき、逆に忘れてしまうことも多い部分。覚えておきたいです。