見えなかったもの見えるようにする技術 - ダイソンはなぜ売れたのか

私が今の部屋に引っ越した時、ほとんどのもの(生活用品・電化製品等)を無印良品でそろえたけど、唯一掃除機だけは買わなかった。個人的に掃除機のあの引きずる感じが苦手で。クイックルワイパーみたいなやつさえあればまあなんとか掃除はできるだろうとタカをくくってた…んだけどその話を友達にしたら絶対に掃除機あった方がいいと説得され、例によって無印良品のスティック型サイクロン掃除機を購入。
早速使ってみる。私が買ったものはサイクロン型でゴミが透明のカップに貯まる仕組み。一通り掃除機をかけたあとゴミためカップを見て驚いた。掃除機ってこんなにゴミがとれるんだ!! その興奮っぷりはすごく次の日に会社の人に「無印の掃除機ってすごいね!! 信じられないくらいゴミが取れた!!」と喋って歩き回ったほどである(軽く迷惑)。
冷静に考えてみればこの無印の掃除機が本当にすごかったかどうかは怪しいものである。何ぶん比較はできないが、他社製掃除機やホースで本体と繋がっているタイプの普通の掃除機の方がよっぽどパワーがある可能性が高い。それにも関わらずなぜ私は「無印の掃除機は沢山ゴミが取れる」と思ったのか。
私は一回の掃除機かけで取れるゴミの量を見た事がなかった。
普通の掃除機は紙パック式。掃除機が吸い取ったゴミを見るのは紙パックが満杯になったときだけ。つまり世の中の多くの人は一回の掃除機かけでどれくらいの量のゴミが取れるかなんてまったく知らなかったのだ。それでいてこの掃除機はよく取れるとかよく取れないとか言ってたんだから笑ってしまうが、そんな人が透明カップ式の掃除機を使ったらきっと驚くだろう。この掃除機は一度でこんなにゴミを取れるのかと。もしかしたら今までの掃除機の方がよっぽどゴミを取っていたのかもしれないのに。
さてダイソンの掃除機がヒットした理由はなんだったのだろうか。電化製品とは思えない奇抜でおしゃれなデザインか。それとも独自開発のサイクロンエンジンか。ここからははっきり言って想像というか妄想の範疇だが、前述の通り透明なゴミためカップこそがダイソンの勝利のきっかけだったのではないか。ダイソンが登場するまで家庭用掃除機がどれくらいのゴミを吸っているか知っている人はアメリカにどれくらいいただろうか。ダイソンは一回の掃除で取れるゴミの量のデータを提示した。しかしそのデータを比較する対象を誰も持っていなかった。オンリーワンこそナンバーワン。こうして無印の掃除機を使ったときの私のように、ダイソンを使った人は周りの人間にこう喋っただろう。「こんなにゴミを取る掃除機を私は知らない」と。
今まで目に見えなかったものを見えるようにする、これは絶大な効果を発揮する。さらにそれが唯一のデータであれば人々は錯覚を起こすことだってある。世の中でグラフが重宝されているのはそれが理由だ。気をつけなければいけない反面、強力な武器になることも覚えておこう。